小雨の井の頭通り

実際の人物はフィクションです

●メゾンド丸の内トーキョー

毎週末のように出かけていた夏が終わり、秋が始まっている。
肌寒さと引き換えに情緒が漂う秋の空の下、今週もまた出かけることにした。
「場所は知っているけど、行ったことがない場所」というオーダーを洗面台の方から事前にいただいているので、それに則って提案をする。
無事提案が可決され、我々が本日向かう先は東京、丸ノ内となった。

東京に住んでいる。丸ノ内線も使っている。が、案外行くことはないのが、東京駅丸ノ内。その理由は中央線を降りて東京駅南口を出ればおのずとわかる。
見渡す限りのビルビルビル。大きなビルは景観として荘厳で楽しいが、その実態がわからない。
大仰な入り口のそれはパンピーが入っていいものなのか、割と怒られるものなのか、その判断が難しい。結局として東京を避けて皇居方面へ行ってしまうのが我々の常だ。
今日こそその殻をぶち割って都民のシティボーイ&ガールとして胸を張りたい。

*(乱立するビルの写真)

強い気持ちで我々が初めに取り組んだのはいつも恒例のショッピング。丸の内近郊にはとにかくショッピングビルが乱立している。
丸ビル新丸ビルKITTEにオアゾ。どれも見た目はオフィスビルディングのようだが、中に入ればあら不思議、洗練されたルミネ・ららぽーとのようなものだ。
東京駅を中心としてぐるりとこれらのショッピング施設が乱立しているのが東京駅丸の内で、正直それで完結しているのが東京駅丸の内だ。
熱い気持ちを落ち着かせてKITTEに入る。
KITTEは5階建ての建物で、そのうち殆どが雑貨屋(セレクトショップ)で構成されている。
「ついつい無駄遣いをしてしまういい大人選手権」日本代表の僕としてはどうしても財布の紐がゆるゆるになってしまう弱点的なオソロシアスポットなのだ。
ちなみに今回の購買では「ケロヨン桶」「白檀の香りのお線香」「業務用スポンジ」シメて一万円を購入した。THE SHOP、恐しい店である……。

*(THE SHOPの看板の写真)

さてそんな浪費活動を無事終えて一階に降りると、耳馴染みはあるけど滅多にお目にかかれない三文字が目入った。
千疋屋
何と神々しいことか、たった三文字の響きだけで庶民には手が届かない高級感と甘美なる贅沢な「何か」が用意されている空間であることがわかる。
そう、KITTEには超高級フルーツパーラー「千疋屋」のカフェがある。
当然入った。そして当然コレである。

*(フルーツパフェのの写真の数々)

輝かしい果物、それを食す、これが人間の業である。
その業を行う前に欠かせない「礼拝の儀」(いただきます)を済ませてからあとはもう一心不乱に食す。いつもは愛らしい彼女もこの時ばかりは獣と化していた。

*(人型の何かがパフェを貪る写真)

身も心もテカテカの我々が次に向かったビルは丸善丸の内本店だ。
あの実は元祖ハヤシライス発祥をしたことでお馴染み丸善ジュンク堂の本店は丸の内のオアゾにある。
ちなみにこの書店、僕は仕事でお世話になっていたこともあるので、マスクを着用しての来店。
これが世間で有名なお忍び丸善スタイルである。彼女はそんな僕の健気な努力を無視するかのようにマスクを剥ぎ取ってくるので、比較的殺伐とした本屋デートとなった。
四面楚歌な状態の中二人揃って紙袋がパンパンになるほどの書籍を購入した。彼女チョイスの『それがやれる人の生きかた』という本を買ってはいるが、恐らく読まないだろう。

*(重たい紙袋と真っ赤になった手のひらの写真)

その後、オアゾをプラプラし、買い物も飽きたので外へ出る。ふと顔をあげると暗がりがかかった丸の内をライトアップされた東京駅が照らす。
さすが首都東京を名乗る駅だけはある。その立派な面持ちに二人「大したもんだ」と賞賛の拍手を送った。

*(ライトアップされた駅の写真)

しばらく植え込みに座って東京駅を鑑賞しながらの談笑に花がさく。
延々に続きそうなその時間の終わりを告げたのはどこからともなく聞こえてきた腹の虫の悲鳴だった。
甘美なるパフェも、我々にかかれば消化も一瞬。そそくさと東京駅鑑賞を離れ本日のディナー探しへ。そしてたどり着くのは、本日手をつけていないビルディング、そう丸ビル。
丸ノ内を代表するハイソな商業ビルは、正直紳士淑女に未だ至れない未熟な我々には少しお早いが、逆に丸ビルディナーを済ませたらもうそれは紳士淑女なのでは?という天才的ひらめきから勢い込んで乗り込む。
妙に多い曲がり角に苦しみながらも、何とかレストラン街へたどり着き、さて行くぞとここへ入った。

(※Marunouchi Cafe × WIRED CAFÉの写真)

結局のWIRED CAFÉ!無念!
我々の貧相なお財布では、丸ビルのハイソレストランには太刀打ちができなかったのである……。
でも美味しかった、ありがとうWIRED CAFÉ、ずっと好きだよWIRED CAFÉ。

と、そんなこんなでちゃんと丸一日を丸ノ内で過ごすことに成功した。だが、どうしても背伸びした感が拭えない。
特にディナーでは丸ノ内に完敗だった(主にお財布が)。
次こそ丸の内に乾杯、と言えるようにお仕事頑張るぞい!と強く胸に刻んで、帰りがけのニューデイズストロングゼロロング缶を買って帰宅。

東京都に住んでいても、東京には住んでいない。丸の内を住んでいるように回遊できてこそ、真の都民として税を収められる。
高めの目標を設定して、今日のところはすごすご退散、そんなお休み。

◆日比谷オールコレクト

天気は概ね晴れ

夏休みが終わってしまったのが悔しくて、「俺たちの夏はこれからだ!」とか打ち切り漫画のようなことを言っている。過ぎ行く夏に追いつくために今日は2人揃ってスニーカーで外へ出た。
行き先は日比谷だ。


うちから日比谷へはアクセスが悪い。
だがそこはやはり港区、三歩歩けば何かしらの駅にぶち当たる立地の素晴らしさ。
最速のルートをネットでサーフィンした結果、我々が降り立つ駅はJR山手線有楽町駅となった。有楽町駅B2出口を抜けると、幅の広い道に出る。どことなく表参道っぽい。

*(道の写真)

日比谷の良いところ第4位は道が広いところ。第3位は空が高いところで、あとは忘れた。

駅を抜け出し緑の多い場所に向かって歩く。毎度のごとく地図は見ない。見れないのではなく、見ない。上流階級の我々なので。とかいっているとすぐ目的地に着いた。

*(日比谷公園入り口の写真)

日比谷公園では毎週何かしらイベントが行われている。つまり悩んだら日比谷公園までくれば困らず、日比谷公園に住めれば年がら年中遊べるというわけだ。

現在行われているのは「ドイツオクトーバーフフェスト」ドイツの食べ物(ほぼソーセージのみ)とドイツの飲み物(ほぼビールのみ)を可愛い女の子が提供してくれ、5回行けばドイツ人国籍が与えられるというアレ。

実際もう5年くらいは来ているイベントなので、ドイツ人ということになっている我々は2人揃って「ふーん、今年はこういう感じね」とか「あー、ミュンヘンに香りするわー」なんていいつつ座り場所を探してウロウロ。オクトーバーフェストは座ればさえすれば勝ち確というガバガバイベントのため、当然血眼で空いているベンチを探さねばならない。

途中この世で1番巨大と思われるビールジョッキに並々ビールを注ぎ、割高なアルコールを摂取していると彼女がテーブルを片付けて離席しようとしているカップルに声をかけて無事本部ベースを確保。その称賛極まる行動の勲章として僕がソーセージとプレッツェルを奢ることになった。苦しゅうない。

*(奢ったとされるソーセージとプレッツェル)

ビール、ソーセージ、ビール、ソーセージ、水、ビール、ビール、ソーセージの順でドイツを噛み締めていると長居をし過ぎてしまった。そろそろ離脱を決め込もうかとテーブル中の飲食物を吸引し席を立とうとすると背の高い男性に「ここ良いですか」と声をかけられた。我々はすっかりドイツ人なのでジョッキを掲げて「もちろん!」と胸を張ったら怪訝な顔をされた。この場合正しいのは我々である。

*(掲げたジョッキ)

座席リザーブリサイクルも済ませて、日比谷公園から無事釈放。 
酔拳ばりの千鳥足で我々が向かった先は最近リニューアルされた「日比谷シャンテ」。

*(シャンテ外観の写真)

そう、シャンテでおシャンテに決めちまおう、という腹づもりな訳である。

シャンテ1Fには質の良い結婚式でもらえる引き出物ランキング第1位のバームクーヘンでお馴染みキハチのカフェがある。
ここで優雅なアフタヌーンティーと勤しむのが我々の目的であった。が、想像以上の激混み。皆考えることが同じなのか、「行列よ夢、幻であれ!」と願ったものの叶うことはなく人はそのまま人だった。まあしょうがない、椅子もあるし酔い覚ましも兼ねて並ぼうかとぼやぼやしていると20分ほどであっさり店内へ。
二人がけのテーブルに案内され、さっと僕がトイレ側に座る。どうだろう、我ながらこういうところが紳士だと思っている。
彼女はそんな配慮も意に介さずメニューを決めにかかっている。
どう考えても満腹の我々であり、この後のディナーのことを考えるとここで重めを攻めたくないものだが。。。

*(フルーツサンドの写真)
*(スフレ的な何かの写真)

このザマである。でも我々は許される、なぜならオトナだから。そしてカロリーは美味しさの単位だ。
流石にお酒は控えてコーヒーとアイスティーにしたので、トータルでゼロカロリーでもある。いや、むしろマイだ。

しばらくのもぐもぐタイム。ここで談笑をしないところが我々のいいところ。
オトナにとって食事とは地球との「対話」。茶化してしまっては野暮なのだ。
しばしの「対話」を終え、まさにティーブレイク。
エモいって言葉はエモくないとか、借りぐらしが丁寧な生活の集大成とか、無印のバターチキンカレーで店が開けるとかそんな話をしていたらすっかり日も暮れ始めて来た。これはいかん夏が終わってしまうと席をたちシャンテ内をぐーるぐる。買い物をチョチョイと終え、シャンテを後にする。

シャンテを出て徒歩3歩で次の目的地、新進気鋭のニューカマー「日比谷ミッドタウン」に到着する。
ここのメインミッションは先に予約済みである映画を鑑賞することだ。先に予約を済ませてある、というところがかなりスマートポイントが高い。スマートさでいえばイギリス紳士が女性の涙を清潔なハンケチで拭うほどのスマートさに匹敵する。スマート2万点だ。

映画上映まで程よく時間が空いているのでミッドタウン探検に出るかと3Fをうろいていると立ち飲み屋がある。
ハイソな商業施設に立ち飲み屋があることに脳がバグりかけていたため、思考をしないまま脊髄反射でのれんを潜ってしまった。
いわゆる割烹的な立ち位置の飲み屋らしい。

*(三ぶんの写真)

小料理屋なので当たり前にお通しが出て来たのが苦しい。もう井の中がドイツやらイタリアやらジャポンやら多国籍が過ぎた。
しかしオトナなのできっちり味わう、そしてあっさりしていて美味しい。日本酒が加速する。
うおーこれはいかん、と彼女が横で唸っている。彼女は起立しながら酒を飲むと普段の3倍の速さでダメになるのである。これがシャアだったら赤い彗星に乗せて宇宙戦争に参戦であるが一般市民であるため、早めにお冷でクールダウン。しばし静粛に、アルコール分解に集中しているようであった。
そうこうしていると映画までの猶予がなくなってくる。サクッと会計を済ませ(スマート4万点だ)4FのTOHOシネマズへ。
満を持してオーシャンズ8を鑑賞してみせた。(アンハサウェイが至高の極みでした。)

劇場を出ると外はもう真っ暗、夜更けが迫って来ていた。
今日ももう終わる、非常に満ちた1日ではあったが、まだ終わりにはさせたくない。
彼女とぽてぽてと日比谷の街を有楽町に向かって歩く。道路看板をみて、少し折れれば銀座でたどり着くことを知った。
これはもう宵闇通り探検隊としては行ってみるしかない。終電も調べていなかったが東京都民は課金でタクシーが使える。気を大きくして銀座方面へ歩みを進めた。

だが結果として、我々が銀座へたどり着くことはない。それはなぜか、これを見つけてしまったからだ。

*(東宝ダンスホールの入り口)

ワクワクが止まらない。強いやつと出会った時の悟空もこんな感じなのだろうか。
とりあえず入ってみた。

*(ダンスホール内の開けたフロアの写真)

あーこれはもうしょうがない。こうなってしまったら踊るしかない。だってダンスホールだし。
休日の夜でなのか、いつもこうなのか、人もまばらなダンスホールをスニーカーで2人かける。
いつか観た古い映画のダンスシーンを真似して観たり、片膝ついてダンスはいかが?とか言ってみたり。
初めてドッグランに来た大型犬よりもはしゃいだ。それはもうしょうがないくらいはしゃいだ。ダンスホールだもの。

*(ダンスホールのなんか素敵な写真)

しかし肺活量は酔っ払い20代半ばの人間のそれ、正味30分が限界で立てなくなった。ダンスホールを滑り転がる時間が続く。

*(ダンスホールを転がってブレブレになっている写真)

お互い心に白旗が上がり、お店の人に頭を下げて退室した。

外へ出る。
頭も心も体もぽっかぽかになった。蒸し暑い9月の天気には適していない。
これ以上外気に晒されるのも勘弁ということで、銀座への殴り込みはまた今度ということにして今日は閉店ガラガラにすることなった。

来た道を戻り、有楽町駅へ戻る。終電を調べるとちょうど乗れそうな時間だった。
オトナとして胸を張れる、非常に良い休日のワンシーン。

軽い気持ちで来た日比谷にはなんでもかんでもあった。
そしてそれが近い距離でぎゅっとあったのも素晴らしかった。日比谷の良いところランキングを更新しなければならない。
これほどまでに綺麗に駒を進められたのも、日比谷の完成度が高いからだろう。

日比谷はすべてを解消してくれる。日比谷がすべてを解消してくれた。すごく助かるありがとう日比谷。